マックス・エルンスト
フィギュア×スケープ
4月7日(土)〜6月24日(日)

横浜美術館

back

 シュル・レアリスムにはさほど興味はないが、エルンストだけは別格。学生の時兵庫県立美術館で見た彼の展覧会は今でも印象に強く残っている。オートマティスムから生み出されるキャラクターや風物が独特の世界と空間を形成する様に魅了された。自分自身が初めて現代的な表現としてキュビスムに関心を持った後、さかんに模倣していたのがデカルコマニーによる制作だった。あの頃の作品どこにいったやら。
 そのエルンスト展だが、前回の松井冬子展がかなり話題になったせいか、記事を目にすることも少なく何だかひっそりと開かれている感じ。会場も控えめな来館者でゆったりと鑑賞できるのはいいかな。今回は国内の美術館からの作品が多くスケール的には小さな展覧会で彼の代表作もほとんど見ることはできないが表現の一端には触れることができる。しかしエルンスト、まだまだ、こんなもんじゃないと思ってしまうのも事実。(4.28鑑賞4.30記)



杉本博司 ハダカから被服へ
3月31日(土)〜7月1日(日)

原美術館

back

 ここ数年現代美術よりも日本の古美術に関心が強いためか、ここ原美術館にもsうっかりご無沙汰。記録を調べてみると何と2001年以来ということで11年ぶりの来館。ただし現代美術が特に嫌いになったわけではなく、いくら古美術に関心が強くなったといっても興味ある展覧会があれば来ていたわけで結局心惹かれる企画展がなかったということ。もちろん今回はとても心惹かれる展覧会。
 杉本氏の展覧会は昨年丸亀の猪熊弦一郎美術館で見て大きな感動を味わった。以来氏の展覧会はなるべく丁寧に見るようになった。(それまでは写真と意味深なインスタレーションに入り込めなかった)今回は氏の作品から「着る」というコンセプトを表現するものを展示、構成したもの。相変わらず写真の美しさには圧倒される。特に展示室2にある大作は引き込まれる魅力があり妖艶なマネキンにも驚く。ある展示室には秀吉が花見に使った幕や放電を染め抜いた着物などあり、こちらも氏のコンセプトである歴史と表現の関わりを重層的に提示していた。
 見れば見るほどまた別の作品を見たくなってしまい、少し点数的には物足りないが、展覧会としての完成度が心地よかった。(4.7鑑賞4.8記)

 


宮澤賢治・詩と絵の宇宙
雨ニモマケズの心
3月29日(木)〜4月22日(日)

そごう美術館

back

 宮澤賢治の童話は子ども向けというには難解で不思議過ぎる世界だが、その世界に一歩踏み込むと、そのとらえどころのない魅力に全身すっぽりとはまり込んでしまう。彼の童話は結構読んでいたがこの展覧会を見てみるとまだ知らない世界も多く、これからもじっくりと彼の世界を楽しんでいこうと思った。
 さてその展覧会だが、危惧したとおり全体的には絵本の原画展という構成。「雨ニモマケズ」の手帳や賢治制作の水彩も2点ほどあるがそれも会期中入れ替え展示という。原画の中ではスズキコージ氏と矢吹申彦氏のものがいい。それにしても近日「クルコーブドリの伝記」が封切られるそうだ。人物を動物に置き換えた「銀河鉄道の夜」のスタッフがやはり動物化して制作したそうだが、大好きな童話だけにちょっと複雑な心境。胸痛む、悲しくもやさしいお話。(4.7鑑賞4.8記)

 


抽象と形態
何処までも顕れないもの
1月14日(土)〜4月15日(日)

DIC川村記念美術館

back

 出品作家:五木田智央、アンダース・エドストローム、角田純、フランシス真悟、野沢二郎、赤塚祐二、吉川民仁、モネ、ピカソ、ブラック、ヴォルス、モランディ、サム・フランシス、アド・ラインハート、サイ・トゥオンブリー。

 知人の野沢二郎さんが出品する展覧会。チケットをいただいていたので久しぶりに佐倉へ出かける。充実した常設展を見た後企画展会場へ。この美術館は以前ロバート・ライマンの展覧会で来たことがあるが、その時にはもっと広いスペースで開催されていた。各日本作家はかなり張り切って大作を出品していたが、展示スペースが狭くその大きさと全体的な雰囲気をつかむことが難しかった。その中で「抽象と形態」という関係をわかりやすく提示していたのは、モネの睡蓮と共に展示されていた水面を思わせる野沢さんの作品と赤塚祐二の作品。最近珍しくなった現代美術の企画展だっただけにもう少し大きなスケールで紹介してもよかったのでは。(3.31鑑賞4.1記)


平常展 美術館でお花見を
3月20日(火)〜4月15日(日)

東京国立博物館本館

back

 お花見の季節。桜に関連した作品が平常展会場のあちこちに展示されていて華やかさを演出していた。国宝室の「花下遊楽図屏風」(狩野長信)は当時の風俗を楽しめると共に今も昔も花見を楽しむ姿は変わらないことを実感。その他の展示作品では「准胝観音像」「四季山水図」(雪舟)、「源氏物語図色紙」(土佐光吉)、「達磨図自画自賛」(慈雲)、そして本日一番の収穫が「桜山吹図屏風」(伝俵屋宗達)。これは宗達派らしいこんもりとした山並みに桜や山吹を配した絶妙の構図が魅力的。しばし見ている内にスケッチをしたくなって久しぶりに館内で描く。「博物館でお花見を」堪能できた作品。(3.30鑑賞4/1記)


ボストン美術館 日本美術の至宝
3月20日(火)〜6月10日(日)

東京国立博物館平成館

back

 本年度の企画展を見てみると来年の3月まであまり魅力的なものがないのでしばらく東博ともお別れかな。さて、名品の数々という触れ込みでやってきた「ボストン美術館展」だが、入ってすぐ見られる平安仏画が素晴らしく、こんな名品をよく当時の日本人が手放したものだ。明治を迎えて以降、日本の価値観の欠如や廃仏毀釈など時代の迷走ぶりも影響していたのだろう。
 ボストン美術館のコレクションは当時の東京大学教授のモースの紹介によって来日したおなじみのフェノロサが光琳など千点以上、ボストンの資産家で医師のビゲローが来日してコレクションしたのが何と4万1千点。それが美術館コレクションの中核になっているが、その中で今回見られるのはわずかに90点。光琳の「松島図屏風」は以前から見たかった作品だったが波のうねりとその躍動感に圧倒される。他に「法華堂根本曼荼羅図」、「竜虎図屏風」(長谷川等伯)、「吉備大臣入唐絵巻」など珠玉の名品の数々。後半は曽我蕭白の作品が多く展示されているが中でも今回修復されてパネル仕立てで展示されている「雲龍図」は名品中の名品。龍の胴の部分が賭けているのは残念だがそのことが気にならないような完成度の高さ。必見。 (3.30鑑賞4/1記)



生誕100年 ジャクソン・ポロック展
2月10日(金)〜5月6日(日)

東京国立近代美術館

back

 現代美術に感心を持ち始めた学生の時、古典的な美しさを感じたのがポロックだった。大原美術館の「カットアウト」はどういう経緯で制作されたのか等、語っていたっけ。今でこそポーリングやドリッピングという行為で語られているが、当時は彼の行為はドリッピング一辺倒の表現で言われており、サム・フランシスのタシスムとともに行為と表現が一体となって生み出されたその作品は憧憬の的だった。
 さて、今回の回顧展は海外の作品と国内で確認されるポロック作品を全て集めて展示したもの。展覧会は
「第1章1930-1941年:初期 自己を探し求めて」
「第2章1942ー1946年:形成期モダンアートへの参入」
「第3章1947−1950年:成熟期 革新の時」
「第4章1951−1956年:後期・晩期 苦悩の中で」
という4章で構成されて彼の制作過程や表現への姿勢や意識について個々の作品の解説が丁寧で大変わかりやすい。ただ大変残念なのは海外の作品、それも代表作が少なく、それぞれの章が少ない作品を示しただけで次に展開していくため、鑑賞後物足りない気持ちが残ってしまう。国内全てのポロック作品+海外の作品で70点、そのうち版画やドローイングもあるので肝心のタブローは推して知るべし。特に初期や形成期に興味深い表現が多かっただけにもう少し観たかったなあ。

 



北京故宮博物院200選
1月2日(月)〜2月19日(日)

東京国立博物館平成館

back

 この展覧会、1月のEXHIBITIONに書いたように200分待ちに耐えられず入るのをやめた展覧会。でも年間パスポートを持っているので、「清明上河図」展示終了後なら大丈夫だろうと2月4日に出かけた。
 1月末には入場制限まであってなんと240分待ちにまでなっていたが、2月になると何とか鑑賞可能範囲の混雑。展示物は国宝級の「一級文物」が半数ということで、中国お得意のよくぞここまでといった超絶技巧の数々が目立つ。それはそれで素晴らしいが、」趙孟?(ちょうもうふ)の描いた「水村図巻」という水墨作品が一番印象に残ったかな。
 話題になった「清明上河図」の部屋には写真説明と複製が展示されていたが、大変精密な複製なのでそのまま本物を見ている気分(ただ本物との違いはわからないけれど)になれたのは収穫。それにしても緻密でありながらユーモラスな面もある風俗画の名品だろう。少し満足して帰ることが出来る。(2.4鑑/2.7記)



村山槐多の全貌
12月3日(土)〜1月29日(日)

岡崎市美術博物館

back

 朝10時頃、ジョギングをしている時に「今日が村山槐多展の最終日か」と考えると急に出かけたくなり3キロほどで切り上げて帰宅。すぐ準備をして名古屋に向かった。時間は10時半。ちょっと遅いかなと思ったが槐多のデッサンが頭に浮かぶたびに作品を見たくて仕方なくなる。 11時10分発の新幹線で名古屋まで行って名鉄で東岡崎へ。1時50分到着し会場の岡崎市美術博物館には3時前に無事到着。
 会場はこれが市立の美術館かと思うほど素晴らしい施設。山を切り開いた総合公園の中にあり素晴らしいロケーション。最終日とあって多くの来館者があるようだが、混雑混という状態ではなく落ち着いて鑑賞できる。展示壁面が黒というのも珍しいが槐多の作品にはよくあっているように感じた。   「史上最大級!奇跡の展覧会!」という触れ込み通り、現在展示で★★★☆ 意外な納入仏に出会えるきるかいた作品はほとんど展示している。初めて出会う作品なども多くとにかく看板に、偽りのない充実した展覧会で槐多芸術を堪能することができる。改めて水彩の青と赤の美しさや躍動感のあるデッサンなどアートの最も根本的で大切なことに出会ったように感じる。最終室に展示されている樹木の連作と大好きな「欅」のドローイングが感動的。人物、風景画に限らず全てのものが息づいている作品群に改めて感服。
 会場では話題になった大作「日曜の遊び」も見ることができる。これは槐多作品として以前回顧展に展示されたが、その後山本鼎が描いた同じ下絵が見つかったため鼎作品とされていたが、学芸員の村松和明氏の研究により、鼎の下絵をもとにかいたが制作したと結論づけられている。ただし作品としては槐多であろうが鼎であろうが、魅力的なものではなく正直どちらでもいいかなと思う。それよりも他の作品が数段魅力的なので。いやはや、つくづく来てよかったと思えた展覧会。(1.29鑑/2.1記)



仏像からのメッセージ〜像内納入品の世界
12月9日(金)〜2月5日(日)

神奈川県立金沢文庫

back

 こちら金沢文庫は小さな展示館ながら称名寺の散策と合わせて見ることができて意外にほっとさせられる場所。今回は仏像の中に納入されていた品々を展示する展覧会。像内に納入することは特に真言律宗で重要視されていたということで、仏像に魂を籠めるために仏舎利を始め、印仏、擦仏や経、小さな仏像をはじめ、中には五臓(内蔵)を布や紐で作成したものなど仏像に由来する様々なものが納入されている。変わり種は家族に当てた文書が収められていたり、未開の蓮華など。特に未開式蓮華は阿弥陀如来の衣を下から4分の1ほどのところで分断できるよう造仏し、足の部分から3つの蓮華、頭部に1つの蓮華を納めた斬新なもの。展示されている仏像の横に掲示された分断写真はかなりのインパクがあり一見の価値有り。(1.28鑑/2.1記)


ベン・シャーン クロスメディア・アーティスト
12月3日(土)〜1月29日(日)

神奈川県立近代美術館葉山

back

 日曜美術館での特集を見ていて行きたくなった展覧会。そのメッセージ性の強さからつい敬遠しがちだったが、展示された作品からは繊細な色彩や表現の美しさを感じることができる。写真家でもありデザイナーとしても独創的な作品を残しており、一枚の写真から様々にコラージュされてタブローができあがっていく様が興味深い。展示部屋では最後になるのが第5福竜丸に関する作品であり、その「ラッキードラゴン」は最もベン・シャーンの生き方と表現を代表するものだろう。展覧会はその後、名古屋、岡山、福島に巡回。   (1.28鑑/2.1記)


生誕100年 藤牧義夫展 モダン都市の光と影
1月21日(土)〜3月25日(日)

神奈川県立近代美術館鎌倉

back

 

 初めて藤牧義夫(1911〜1935)の名前を知ったのは州之内徹氏の著書「気まぐれ美術館」。著書では「赤陽」と「白描絵巻」が中心となって語られていて突然の彼の失踪と合わせて特に印象的な章だった。今回、これだけの作品を見るのはもちろん初めてであり25歳で失踪したことを考えると彼のほぼ全作品で構成されているのではないかとも思われる。
 藤牧の芸術家としての第1歩は亡き父を偲んで自らが編集と制作を手がけた「三岳画集」と「三岳全集」という手製の本。いずれも印刷物ではなく父の業績や思い出を絵によって表現したものだが、何とこれを制作したとき藤牧は15歳。末っ子で父親に可愛がられた義夫だったが十三歳の時に父が死去。その雅号である「三岳」をタイトルに一冊目の「三岳全集」を編纂し2年後に完成。藤牧家の家系図、父の肖像が、愛用品などから父との思い出や父の掛け軸なども描いた。その翌年完成した「三岳画集」は父の赴任した小学校、職場や父の面影を描いたスケッチなどでまとめた労作。会場ではTV画面によってその一端を知ることができるが、義夫の父への思いが痛々しく伝わってきて感動的である。
 その後上京し1932年に参加した新版画集団では白と黒のコントラストを生かし対象を単純化したフォルムで表現しており谷中安規を彷彿とさせる。1934年には前述の「白描絵巻」の制作。これは隅田川沿岸を最長で16mにも渡って表現した絵巻で、美しい遠近法で表現されているが、その線は流麗で美しい。そして翌年の1935年失踪しその後の消息はわかっていない。「気まぐれ美術館」では洲之内徹氏の急死によって最終刊になってしまった「さらば気まぐれ美術館」のそれも最終2話が藤牧義夫の章にあてられている。そしてその最終章では「藤牧義夫についてはもう1回書く」と宣言までしているが、残念ながらその後の文章は読むことができない。そこにはノイローゼになって隅田川に身を投げた云々のさわりがあるが、どこかで天寿を全うしていたのではと思いたい・・・。(1.28鑑/2.1記)

 



肉筆浮世絵の美〜氏家浮世絵コレクション
1月1日(日)〜2月12日(日)

鎌倉国宝館

back

 鎌倉国宝館で初春に開催されるコレクション展。
氏家コレクションとは氏家武雄氏の蒐集した肉質浮世絵コレクションを鎌倉指と氏家氏が協力し財団法人化したもの浮世絵版画と異なり一点もの、しかも絵師本人によるものなので貴重であるとともに版画にはない作家の体温や当時の様子を生々しく感じることができ楽しめる展覧会。特に江戸時代の風俗や生活感が微笑ましく表現されている奥村政信の「当流遊色絵巻」が面白い。  (1.28鑑/2.1記)



平常展

2012年1月
東京国立博物館本館

 恒例の東博「博物館に初詣」。ただ今東博で「北京故宮博物院200選展」開催中。ホームページで会場混雑状況をチェックしてみると午前中は入場待ちがありその中の「清明上河図(せいめいじょうかず)」には180分街との情報。平日の午後なら大丈夫かなと出かけてみると何と200分待ち。即決で観覧中止して平常展のみ観る。
 年明けの東博は毎年華やかな展示が平常展でも行われているが、ことしもいい作品が目白押し。白眉は池大雅「楼閣山水図屏風」で大雅の端が表現全てが味わえる名品。おなじみ雪舟「秋冬山水図」、光琳「風神雷神図屏風」、狩野常信「竜虎図」、日月山水図の他入り口の埴輪コーナーも印象的。さて「清明上河図」の展示は24日まで。今度は閉館近くに行ってみるかな。 (1.11鑑/1.11記)

 



澁谷ユートピア

2011年12月6日-2012年1月29日
松濤美術館

back

 池袋モンパルナスは練馬区美術館や板橋区美術館で取り上げられ興味深い展覧会が行われているが、今回は「澁谷ユートピア」という新たな提示。ただし小熊秀雄の詩から命名された「池袋モンパルナス」がアトリエ村を中心にして、様々な文化や運動が花開いたことを考えると今回の「澁谷ユートピア」は単純に渋谷区に住んでいた芸術家達を取り上げたもの。取り上げられている作家は当然ながら興味深いが、どこでもだれかが住んでいたのは当然で、また別の地区のユートピア企画が出てくるかもしれない。村山槐多、竹久夢二、海老原喜之助、寺田政明、河野通勢の作品が印象的。(1.7鑑/1.9記)

 


ちいさなちいさな遙邨展

2012年1月5日-3月18日
倉敷市立美術館

back

 倉敷市美術館恒例の遙邨展だが、今回は寄贈作品と館所蔵の小品で構成された規模も小さい展覧会。今までも何点かは見たことはあるが、さすが遙邨さん、小品も魅力的で非常にいいものが多いのに改めて驚いた。ほとんどが作者寄贈作品だが、遙邨氏が市場に出さないで手元に置いておいた作品なのだろう、色彩や構図に氏独自のユーモラスで暖かい視点を感じることが出来る。会場は「富士山いろいろ」「潮騒が聞こえる」「春・夏・秋・冬」などのコーナーに分けられていて初公開作品を含む約80点を展示。親しみやすく年始からいい作品に出会える好企画。

 同時期に3階ロビーで「岡本唐貴 人・ヒト・ひと」展も開催中。こちらは入場無料。(1.5鑑/1.6記)