美術の遊びとこころ5
日本美術デザイン大辞典
2012年6月30日(土)−8月26日(日)

三井記念美術館

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 この「美術の遊びとこころ」シリーズは古美術入門編として企画されている展覧会。今回は五十音順に古美術の養護を所蔵品中心に解説するというユニークな試み。例えば「あ」は赤絵、葦手絵、「い」は色絵、印材など。ちょっと力づく的なものもあるが知らなかったことも多く言葉と作品を楽しめる展覧会になっている。楽しめた言葉と作品は「うんげん彩色」「御庭焼」「屈輪(ぐり)」「歳寒三友」「誰が袖」「二十四考」「麦藁手」「留守文様」等々。(7.7観/7.8記)



川内倫子展
照度 あめつち 影を見る

2012年5月12日(土)−7月16日(日)

東京都写真美術館

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 ここのところ話題になっている川内倫子氏。杉本博司氏以外の写真展には大変消極的だが気になる写真(左チラシ)を見つけたので今回は出かけてみることにした。マスコミでも取り上げられることが多いので会場は混雑している。特に映像の部屋はまさに立錐の余地ないような有様。やっと隙間を見つけて座り込んで見ていたがこれが中々興味深く面白かった。日常の様々な場面をとらえた映像だが、その断片がつなぎ合わされながら創造力をかき立ててくれる。彼女の写真がそのまま映像となって動いていると思えばいいし、逆にその映像を一点に咀嚼したのが写真とも言える。会場構成が面白くインスタレーションとして写真を楽しむことの出来る展覧会。(7.7観/7.8記)

モダンガール万華鏡
2012年5月29日(日)−7月8日(日)

千葉市美術館

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 英泉の会場からこちらに移動して正直ほっとした。英泉の細密な描写から正反対にゆったりと大らかな表現になる。明治、大正の版画作品が展示されているが、普段何気なく見ていた竹久夢二まで新鮮。会場では織田一麿の石版画に出会えたのが収穫。わずか3点だが女給(大正9年)の作品と昭和初期の銀座を表現した2点の作品はノスタルジックで美しい。 (6.23観/6.30記)


渓歳英泉
2012年5月29日(日)−7月8日(日)

千葉市美術館

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 渓歳英泉に関心を持ったのは昨年8月に東博の本館で観た「木曾海道六拾九次の内」という浮世絵シリーズ。自分自身浮世絵にはほとんど関心が持てなかったがこのシリーズは庶民の表情や生活感があふれていて大変楽しめるものだった。そんな時に英泉の大きな展覧会が開催されていることを知り大きな大きな期待と楽しみを抱いて千葉市美術館へ。会場に入ると初期の作品から展示されているが苦手な美人画ばかり。いよいよ本格的な英泉の世界に入ったと思ったら、さらにコテコテの美人画。それも過剰に装飾され、パターン化されたものが多く徐々に鑑賞速度が上がる。途中「木曾街道〜」のシリーズや風景画に足を止めるが、後はちらっと目をやる程度で鑑賞終了。帰宅後チラシなど観るとそうでもないが大きな会場で見る浮世絵にはいつも途中から拒否反応が出てしまう。完璧な職人技に当てられるのか鑑賞環境が自分に合わないのかわからないが、とにかく厳しい展覧になってしまい残念。(6.23観/6.24記)

福田平八郎と日本画モダン
2012年5月26日(土)−7月22日(日)

山種美術館

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 5年前の2007年名古屋で観た「福田平八郎展」は大いに期待して出かけたが、「漣」は下絵の展示のみ。他の観たかった作品も少なく内容的にはよかったが、いつになったら「漣」と出会えるのかと恨めしく思ったものだった。今回は福田平八郎没後120周年という山種美術館の企画でその「漣」が前期に展示されると知り出かけた。今回はその作品だけが目的なので他には関心がなかったが、やはり平八郎の色彩と掘り割りを駆使した着色には魅了される。鉛筆で自分自身がやってみたいこともちらほら思いつく。さて、いよいよ「漣」と対面。自分の中では大きく大きくふくらんでいた作品だったので、意外と小さな作品(それでも180cm四方)だった。何でも表具屋が銀箔の注文を間違って金箔を貼った屏風を持ってきたため困った平八郎はプラチナ箔を張って補ったという。それによって金の暖かい色が下地として見えてより効果的な画面ができあがったそうだ。色彩は群青と銀だけだが、漣の奥から近景へと移る微妙な色彩と波が何とも美しい。この作品の為だけの来館だったが、もちろんその価値あり。後期の展示は「雨」に変わります。(6.9観/6.10記)

 


追悼・一原有徳展 ヒラケゴマ
2012年5月19日(土)−7月1日(日) 

武蔵野市立吉祥寺美術館

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 一原有徳。1910年生まれ。3歳の時、徳島から北海道に父母とともに移住し。60歳で定年退職するまで43年間小樽の郵便局に勤める41歳での油彩画を、47歳で版画を学ぶ。3年後の1960年神奈川県立近代美術館主催「現代日本の版画展」に出品し注目される。
(美術館解説より抜粋)
 氏のモノタイプ版画は当時かなり話題になって様々な画廊や美術誌でとりあげられた。自分も非常に興味を持っており、モノタイプを制作していた時期もあった。ギャラリー池田美術(閉廊)で購入した氏の版画は今でも玄関に飾っている。美術館ではビデオで制作の様子を映し出していたが、実験的な様々な手法は当時の版画隆盛を思い出させてくれる。手法が手法なだけに見ていると作品にマンネリズムが漂うのは致し方ないが、良き時代の作品として懐かしく鑑賞。2010年100歳の長寿を全うして逝去。(5.27)

 


木下晋 祈りの心

4月21日(土)〜6月10日(日)

平塚市美術館

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 自分自身、昨年から本格的に鉛筆画に取り組んでいるが、他人の表現を気にしたことはほとんどない。ただ木下氏の作品だけは一度まとめて見てみたいと思っていたところ一昨日Webでこの展覧会を発見。さっそく出かけることにした。現在では考えられない充実した市立美術館をもつ神奈川県だが、小振りながらもその美しさはいつ見ても感心する。
 展示作品は53点。描く対象が合掌した手「祈り」、最後の瞽女と言われた「小林ハル」さん、元ハンセン病患者の詩人「桜井哲夫」さん、木下氏の「母」など。対象とされたモデルはいずれも氏が強く惹かれた方々でありその思いを伝えるために鉛筆が選ばれたように感じた。ただ作品は洗練された印象で泥臭い印象を予想していた自分にとっては意外だった。資料を読むと描いているのは全てケント紙で、それ以外の紙は10Hの鉛筆が載らないとのこと。2,3作ケント紙を使ってみて、自分の表現には合わなくてやめたことを思い出したが、こんな印象もいいかなと少し思った。
 それにつけても色彩のない表現で人々の様々な人生を深く描いていくという行為が大変印象的な展覧会。(5.19)


棟方志功展

4月14日(土)〜6月17日(日)

平塚市美術館

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 1年に1,2度は見かける「棟方志功展」だが、内容は充実しておりいつも何かしらの収穫を得ることが出来る。先日三越かどこかであった肉筆展を見逃したのは後悔したが、今回出品された肉筆画も素晴らしいものがあった。特に鯉の屏風とおなじみの女人図の美しさに惹かれた。版画も何度見ているかわからないほどおなじみの作品が並ぶが細部に惹かれたり、あらためて大胆でありながら繊細な表現に見入る。やはり天才。(5.19)



物語る身体

5月12日(土)〜6月17日(日)

板橋区立美術館

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 戸田付近をランニングしていると、ふと板橋区立美術館に行きたくなって笹目川沿いに笹目橋から板美へ。昨日から始まったばかりの所蔵品企画展「物語る身体」開催中。こちらの所蔵作品展は全て無料。ちょっと不便だが館の前に「不便でごめん」と掲げられた幟を見ると頬もゆるむ。汗を落ち着かせて2階の展覧会へ。何度か見た作品ばかりだが今回は「身体表現」に関わる近代洋画の作品を並べてあり、これがかなり見応えがあった。印象に残ったのは、里見勝蔵(写真「二人」)、山口長男、長谷川利行、篠原有司男など。素朴な中に強い意志を感じる作品が多い。(5.13)