森俊夫さんのこと

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 ある日、ポストを見てみると何やら大きな封筒がありました。差出人は大阪在住の森俊夫さん。
 最近は互いに年賀状のやりとりくらいで、随分こちらもご無沙汰しています。
 手紙の内容は去年文化庁の在外研修員としてロンドンへ80日間滞在した時の様子を大学にインターネットで送り授業を行い、それを小冊子にまとめられたということでした。

 Macでデザインし、クロマプレス印刷機でダイレクト印刷したとのことで、少部数のフルカラー印刷に適する方法とあるのですが、何のことだかわからないので、今度お会いしたら聞いてみよう。
 森俊夫さんは岡山県出身。
岡山大学を卒業した後、京都芸大の大学院に進学。
その後1973年に渡米しプラット・グラフィック・センターで学び、1977年帰国。
岡山でグループ展の企画を考えていた時、当時岡山大学で版画を専攻していた学生の私に声をかけてくれました。1978年のことですから、もう20年以上前になります。
 その後、インスタレーションの発表を行うようになり東京、関西の画廊で個展を開催。
近年はコンクールへの出品、受賞を重ねており多くの美術館にもその作品は所蔵されています。

 初めて私が個展を開催したのは「村松画廊」でしたが、それは前年の森俊夫さんの個展を見て触発されたところが大きいというか、森さんの個展がきっかけになっています。
 1983年のことだったと思いますが、当時物理的な制約のため不慣れなシルクスクリーン版画を制作をしていた私は何か自分自身の表現に釈然としない思いを抱いていました。そんな時に出会ったのが銀座の画廊数軒で開催された「オーストラリア現代美術展」と村松画廊の「森俊夫展」でした。その時までさほど画廊回りをしていなかった自分にとって、この二つの展覧会には大きなカルチャーショックを受けました。

 版画制作をしながらも現代美術に接していたのでインスタレーションやビデオ作品は珍しくはありませんでしたが、その二つの展覧会、特に「森俊夫展」は、自らの日常が表現の大きなテーマとなっていました。
 村松画廊の部屋にはいると壁面が白い印象。巨大な作品に凹凸がみられ食パンがにょっきりと画面から飛び出しています。よく見るとパネルに自作した荒い紙を貼り付けて直接実物の食パンや部屋にあるのもを描いたり、そのまま設置した作品であり、また画面のどこかには幼児を思わせる美しい線も見られました。
 題材としては森さんが以前アメリカで制作された版画とさほど変わってはいませんがが、表現のインパクトは版画の比ではありませんでした。
 その後、私はシルクスクリーンをやめ、1年後村松画廊でタブローによる初個展を行うことになります。

 森さんは、現在、京都文教短期大学で研究室をもたれていて、その授業の一つとしてインターネットを使っての演習をされたとのこと。「ロンドンの80日」と題された冊子(写真)は、計8回にわたるロンドン日記といったもので、現代美術にとどまらず、イギリスの習慣や文化が実にリアルタイムにとらえられていて興味深く拝見しました。ロンドンの暖かい人たちとの出会い、食事のこと、人種のこと、ファッションのこと等日本の学生に語りかける形の文面があたたかい。

  冊子の内容は、京都文教 デジタル・ワークショップで見ることが出来ます。

(99.5.10/2001.9.7加筆)

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